2015年8月7日金曜日

真空管DCパワーアンプ


真空管DCパワーアンプ
(No.193)
無線と実験2007/7&8

(完成:2009年8月12日)
初段:404A/定電流2SC1775A
2段目:2SA1967/定電流2SC4578
終段:6C19P-Bパラ
電源:+200V/-16V(初段)、+200V/-330V(2段目)、±160V(出力段)

All TubeのDCアンプ。Tr.アンプに劣らず緻密な音を出す。OTLだが安定している。

電源は別シャーシ。GZ34、6BY5Gの整流管を使用。




真空管DCパワーアンプの製作 
(MJ誌 2007/7&8 No.193 参照)


2009/3/1
6C19Pを使ったAll Tubeアンプを作りたい。2008/11の金田アンプ視聴会で聞いた6C19PマルチアンプはTr.アンプに劣らず緻密な音を出す印象を持った。DACを使うようになってソースの純度が上がると音の出口を作るパワーアンプの質が気になってきた。音源によっては硬い音になってしまうのだ。終段に使っているTr.に限界を感じる。今の時代にはTr.はいい物がもう手に入らないのだ。しかし真空管ならまだあるだろう。 手持ちの部品を活用して作ってみよう。

1.構想
6C33C-Bハイブリッドアンプは以前つくった。重厚な音ではあったが発熱が多くて使いにくい。気軽に聞けるアンプではなく結局使わなくなってしまった。この球はもう使わないと決めた。6C19Pならコンパクトで使いやすそうである。6C33C-Bハイブリッドアンプの電源部品を活用してコストを抑えよう。

参照記事は2007/7&8のWE421,6C19P真空管DCパワーアンプとする。初段のゲインを高めた設計だ。また、真空管のピンに直接半田つけするソケットレスとなっている。
手持ち部品の流用を考慮して初段はWE404Aとする。404A6C19Pの組み合わせは「オーディオDCアンプ製作のすべて下巻」に掲載されているが、初段へのゲイン配分が低い昔の設計だ。 電源はコストがかかる部分だ。終段の±160Vは6C33C-Bハイブリッドのトランスとブリッジダイオードとフィルタコンデンサが使える。タイマー付き保護回路もそのまま流用する。ドライブ段他の電源は別トランスで+200V/-330V/-16Vを作る。整流管を使いたいので+200VにはGZ34を、-330Vには6BY5Gを使う(WE412Aは値段が高すぎるので敬遠した)。



2.ブロック図




3.回路図

● パワーアンプ回路

 初段はC3gの代わりに404Aを用いる。Rpは記事どおり7.5kΩとするがIp=10mAにするとRpでの損失は0.75Wになる。スケルトン抵抗はコストが高いのでニッコーム1/2Wで対応したい。WE421Aパワーアンプ(No.177)に倣ってIp=6mAにしよう。
2段目は記事どおり2SA1967とする。初段でゲインを稼ぐ一方、2段目はゲインが少ない。これについてはMJ誌2004/4のp47を引用すると、「2段目は差動アンプといっても2SA1967のhFEは20前後ときわめて小さく、しかもエミッタに帰還抵抗820Ωを入れた電流帰還動作である。アンプというよりは電圧、電流変換と電流伝達作用が主な働きだ」と説明がある。
2段目の定電流には手持ちの2SC4578(Vcbo=1700V)を用いる。終段6C19P-Bのグリッド直列抵抗の100Ωはスケルトンが指定されているがコストアップになるのでニッコーム(1/2W)に変更する。MFBの可変抵抗は記事どおりつけておく。
AOCのカスコードTr.には安価でありそこそこ高耐圧の2SC2230A(Vcbo=200V)を用いた。
 
● 電源回路 / 保護回路

+250V/-330Vには特注Rコアトランスを使用。 GZ346BY5Gのヒータにはそれぞれ6.3V(1A)の巻き線を使う。ヒータ定格は1.6Aなので電圧降下をあとで確認しておこう。+250Vの平滑コンデンサ1000μFは160V用なので2個直列にして耐圧を稼いだ。それぞれのコンデンサに均等な電圧がかかるように1MΩをパラに抱かせた。-16Vは12Vの独立巻き線を使う。平滑コンデンサ4700μFはBlackGateが欲しいが入手不可。終段用±160Vは別トランス(HB-40)から得る。保護回路はMOS-FET(2SK851)を使った遮断スイッチであるとと共に、電源投入時の時限スイッチとしても動作させる。時限動作にはタイマーリレー(松下CDX-2C-180S-100VAC))を使う。この保護回路を時限スイッチとしても使うアイディアは6C33C-Bバイブリッドアンプ(2005年11月作成)を作ったときに思いついたもの。その後2006/11発表のNo.190で無接点のスイッチとして同じアイディアが使われている。「必要は発明の母」とはよく言ったものだ。6C19Pのヒータは8本分の直列に50.4Vを供給する。

● レギュレータ(+200V)回路

記事どおりの回路だが、誤差アンプの真空管に5702WBをつかった。たまたま一本手持ちがあったためである。出力Tr.の2SC1161は入手難なので、メタルCANの2N4240 (Vcbo=500V, 2A, 35W)で代用する。



4.部品調達
● 真空管
404Aは昔買ったペア測定品。6C19P-Bは通販で10本購入。店によっては2k\/本するが、1k\以内で売っている店をネットで見つけた。メールで在庫確認したら速攻で返信あったのでその日に注文した。届いた球はメーカ不詳だが、6C19П-Bと書いてある。9の次はnではなくロシア文字(キリル文字)であり、英語のPに相当するらしい。
6BY5Gも通販で入手した。USA製のPHILCOというメーカのもの。リブランド品かもしれないが。




● 404Aのペア選別
ソケットレスなので作ってしまうと差し替えが出来ない。ペアが取れているか確認した。2本一緒に同一のグリッド電圧をかけてプレート電流の差が少ない組み合わせを選ぶ。グリッドの直列抵抗100Ωは、これを入れていないと突然プレート電流が増える現象が発生する。 Ip=5mAでの2つの404Aのプレート電流差は0.6mA程度であった。
(測定回路) 





5.製作

5.1 基盤製作

● 初段基盤 
404Aが入る穴は10mmホールソーであけて、リーマーで広げる。ホールソーは中心位置がピタリと決まるので有用だ。オフセット調整用のVRはサポートを使用せず基盤の穴に普通に固定する。うまい具合にトリマーねじの位置が2つの404Aのほぼ真ん中に来る。
樹脂サポートの高さは10mmが良いが手持ちの15mmを使うことにした。
2009/3/29




● 2段定電流回路基盤
Io調整用の半固定VRは15mm樹脂サポートに接着し、リードは7本より線で延長する。

●+200レギュレータ基盤
5702WBは背が高いので基盤に本体がピッタリ通る穴をあけて通す。プレートのリードは他に接触する事故が起きそうなのでテフロンチューブを被せた。 (基盤配線図)




●AOC (Auto Off-set Control)基盤
2.2μFが大きいので配線面を上にして固定するためには25mmの基盤サポートが必要。
(基盤配線図)


●6C19P出力段基盤
6C19Pが入る穴は10mmホールソーであけて、リーマーで広げる。基盤と6C19Pの間には4箇所にエポキシでスポット接着する。ピンにはめっきがしてあり半田の乗りは良い。
 


5.2 ケース加工

●パネル
フロントパネルにかっこよくレタリング文字を入れたい。白文字のインスタントレタリングを使うのが最良だが、PCの好きなフォントで印刷した文字を使いたい。水転写シートにインクジェットプリンタで水色文字を印刷して貼ってみたが、黒いパネルではぜんぜん目立たないのでだめだった。インクジェットでは白系の色が出ないので無理だ。そこで思いついたのが「プリントゴッコ」の利用。これはシルク印刷の原理だ。インクさえ良いものがあれば金属にも印刷できるはずだ。さて10数年ぶりに押入れから出してきたプリントゴッコの箱にはまだランプやマスターが残っていた。しかし、白インクがやや硬くなっていた。仕方ないので新しいものを買ってきた。インクやマスターはまだ東急ハンズで売っていた。(「プリントゴッコ」本体は既に数年前に製造が終わっている)

文字フォントはOld script(http://www.dafont.com/search.php?psize=m&q=Old+script)を使った。レーザプリンタで印刷したものがそのまま原稿になる。マスターに焼いてインクをのせれば準備完了。
安易だが、パネルの上にマスターをのせて上からクレジットカードでスクイージすると・・・・ なんとか印刷できる。油性インクなので金属上でもはじけることなく定着してくれそうだ。

 



 

かなり長い時間放置していたが、このインクはいつまでたってもベタベタしている。やはり金属面への印刷には無理があるようだ。アクリル系のクリアスプレー(つや消し)を上からかけて仕上げた。

●天板
天板の真空管を通す穴はΦ25のシャーシパンチであけた。アルミ材2mm厚をシャーシパンチで加工するのはかなり大変だ。皮手袋は必需品だ。放熱の穴Φ7はドリルの刃をΦ2から始めて1mmずつ大きくしていくのがベスト。手間はかかるが、バリも少なくて仕上げが楽になる。仕上げはΦ10のフリードリル刃で軽く面取りする。


5.3 配線



初段の調整中に気づいたが、ケースがGNDに導通している。原因はSP端子だった。パネルの貫通穴の径が小さすぎて、端子のねじ部とパネルが接触していた。径を少し大きくして、ねじ部にはスケルトン抵抗のガラス繊維被服をかぶせた。




5.4 電源部分
電源は6C33C-Bハイブリッドパワーアンプをつぶしてシャーシと共に電源トランス・フィルタコンデンサを流用する。ドライブ段用電源トランスを追加する。Rコアトランスは不恰好だが親亀小亀のように並ぶとちょっと滑稽だ。2本の整流管は左右に配置。オクタルソケットが取り付くようにアルミのプレートを作った。ソケットの穴Φ28は糸鋸(コッピングソーテーブル)で切ってリーマーで仕上げた。

 
↑6BY5Gの姿が頼もしいが全体から見るとちょっとバランスが悪い。


6.調整
2009/8/8
左Chの調整。SP端子には8Ωのダミーロードを接続する。終段上下のグリッド抵抗の電圧を測るためにテスターをつなぐ。電源を入れると+200Vはゆっくり立ち上がる。終段グリッド抵抗の電圧が揃うようにバランスVRを調整する。-47V位でほぼ上下均等になるが、時間とともにかなりドリフトする。これを補償するのがAOCだがちょっと不安。終段の-160V配線の間に電流計をつなぐ。電源にタイマーリレーを挿入して、SP端子のダミーロード両端にもVo計測用のテスターをつなぐ。タイマーはとりあえず1分に設定。電源投入後、タイマーリレーが動作すると終段に電流が流れ出す。電流計はすでに100mA以上を示している。Voは10mV程度に収まっている。バランスVRを動かすとVoは多少少なくなるがAOCの働きでゼロには定まらない。Io調整用のVRは左いっぱいだが150mA程度流れている。時間とともにIoが増えるようであればVRのシリーズ抵抗(2.2kΩ)はもう少し大きな値に変更する必要があるだろう。終段のグリッド抵抗の両端電圧は47Vである。

2009/8/12
右Chの調整。Io調整用VRが左いっぱいの位置で終段グリッド抵抗の電圧は約-60Vでバランスする。しかし左Chに比べて不安定だ。電源を入れてから落ち着くまでに1分以上かかる。404Aのウオームアップ特性が違うのだろうか。タイマーリレーは2分にセットした。Ioが130mAになるように調整した。時間とともじわじわと上昇するがだいたい安定している。このときの終段グリッド抵抗の電圧は約-55Vとなった。
左ChのIoを確認すると200mA以上になっていた。Io調整用VR左いっぱいで絞りきれないので、VRのシリーズ抵抗2.2kΩを2.7kΩに取り替えた。

↑調整中の右Ch。グリッド抵抗の両端電圧を測る。±160Vの結線は外しておく。

7.完成
2009/8/12
タイマーリレーの動作時間2分はかなり長く感じる。ケースの温度は60度くらいに達しているだろうか。夏場は部屋の冷房が必要だ。
音は柔らかいようで硬い。中低音はよく出る。高音は派手ではなく、抜けが悪い感じがする。Tpが飛んでこない。それでもCDを聞いていると耳が痛くなった。滑らかな感じがしないのでひずみが出ているのかもしれない。ステップ位相補正のCを調整したら良くなるかも。もう少し聞いて耳を慣らしてみよう。
2009/8/14
ステップ位相補正の39pFに手持ちの20pFをパラ接続した。高音が多少滑らかになった。

 
↑6C19Pはプレートの間からヒータの明かりが良く見える。

↑電源シャーシの上にアンプ本体を重ねて置くことが出来ないので棚の下に置く。

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