2015年7月14日火曜日

AQ-1004 (Antique Sound Lab 製)

AQ-1004 (真空管パワーアンプ)
 (Antique Sound Lab 製)

 2006年1月5日修理
初段、ドライブ管  12AU7 
終段管 EL34 pp





AQ-1004の修理
2005/12/26
思いがけず、ある人から譲り受けた。ただし電源トランスなし、EL34片ch分なし。「もう捨てるつもりだったからぜひもって行ってくれ」と、シンガポールから持ち帰った。 全TUBE-AMPを手がけるのは初めてだ。マニュアルに回路図がのせてあるので何とか修理できるだろう。 初段、ドライブ段が差動型で、オーバオールNFBがかけてある。回路図をみているうちに、この音が聞きたくなってきた。 すぐにEL34のペア管を買い求めた。次は電源トランスだ。





2005/12/29 修理前(before restoration)

↓裏板をはずしたところ                                                           



 ↓ヒータのリード線はメイン基盤の裏にあった。基盤上の基盤はガラスエポキシのようだ。2つの電解コンはB電圧フィルタ用220μF/450V             

↓メイン基盤に生年月日の印刷?
 

-          入力信号のシールド線にはTAIHEI DENKO OSAKA JAPANの印刷。日本製だ。Webでメーカを探してみたが見つからなかった。
-          配線材のリード線(錫めっき多芯線、AWGサイズ)にはWONDERFULの印刷があるが、これもメーカ不詳。
-          NFBCにはスチロールコン(220pF)が使ってある。いずれディップマイカなどに交換しよう。
-          ためしにヒータ点火してみたが12AU7のソケットの一部が接触不良のようだ。球をしばらく抜き差ししていれば良くなるだろうか。


2005/12/30
↓野口トランスに発注したパワートランスが届いた(銀行振込み日から3日目に届いた)       
  Power transformer is just delivered from Tokyo.                   
 

↓アルミアングルで下駄を作った。
 Transformer mounting stand made of aluminum stuff.

電源トランスを取り付けるだけで一日かかった。シャシーに直接マウントできないのでアルミのLアングルで下駄を作った。さて電源の動作チェックから。マイナス側は問題ないようだ。しかしB電圧がだめ。負荷なしにもかかわらず、電源のヒューズ(3A)が一瞬で切れる。整流回路に問題ありか。
The power transformer is ready for mounting after one-day work. Starting from check of power circuit.  Minus power is OK, but when plus power is powered, it instantly blows fuse although there is no load. Its rectification circuit may have some problems.


2006/01/04
B電源を生かすとどうしてもヒューズが切れる。トランスの350Vタップでは電圧が高すぎるので310Vタップに変更した。それでも2Aヒューズは一瞬で溶断する。思い切って5Aヒューズ(トランスの指定ヒューズは3.5A)にしたら切れずに電圧が出るようになった。コンデンサインプットなので突入電流が大きいのだ。無負荷時の電圧はフィルタコンデンサの公称耐圧450Vを超えている。(いずれ500Vのものに交換しよう)
The transformer secondary 350V tap was changed to 310V, and the fuse was replaced from 2amp to 5amp. The fuse might have been blown due to big rush current when filter capacitor is charged.

各電源電圧は次のとおりとなっている。
Vcc: +455V (終段B電源)
Vdd: +333V (ドライブ段電源)
BIAS: -35V  (終段バイアス電源)
V-: -129V (初段マイナス電源)

Ch分の球を挿して調整。ドライブ管上下のプレート間電圧がゼロに近くなるように初段カソードに入っている差動バランスVRを調整。つぎに、終段管上下のカソード間電圧がゼロに近くなるようにバイアス調整VRを調整。カソードに直列に入っている10Ωの両端電圧を計ってみると、回路図では0.5V (Ip=50mA相当)設定なのに0.6V(Ip=60mA相当)以下に下がらない。L-ch (新しいJJE34L)の方は1.0V(Ip=100mA)を超えている。バイアスがちょっと浅い。Adjustment for each channel. At first, differential adjustment of driver stage was done using balancing VR at first stage cathodes. Then, differential voltage between two cathodes of the power tubes with bias adjustment VR. The plate current is 60mA for R-ch, 100mA for L-ch. (New pare of E34L made by JJ-electronic is used for L-ch)

ダイエイ30芯でスピーカにつないで音出し。思いのほかクリア。残響がきれいで、音の減衰が滑らか。これはTrアンプとは明らかに違う音だ。ウーハに耳を近づけるとややハム音がするが気にならない程度。 ところが、5分くらいすると右Chからボツッ、ゴソゴソというノイズが出始め、次第に慌ただしくなる。次の日も同じ。どうも暖まってくるとノイズが出る。12AU7をタッピングするとバキバキというひどい音が出るし、その直後はノイズが収まったりする。基盤に半田付けされているソケットの接触不良か。
The first impression of the sound is so clear and pure. Decay of echo is so beautiful and natural. This is apparently different from my transistor amps.  The R-ch is getting unstable with irregular noise as it getting heat. This happens every time after 5 minutes I turned on. Sockets of 12AU7 may have bad contact because the noise is highly depending on tapping of those tubes.


2006/1/6
仕事から帰ってきて冷え切ったアンプに電源を入れた(外気温は2℃くらいだった)。ところが、左右Chからひどいハム音がいきなり出はじめたのであわてて停止。ついにフィルタコンデンサがだめになったか。この電解コンは時間が経ってもともと劣化しているようだが、温度が低い状態でも極端に性能劣化するものらしい。When I turned it on one day at night with low temperature, heavy line noise suddenly came out from both channels. The filter capacitors of power circuit may be dead.

2006/1/15
とある人からの指摘で、EL34が熱暴走しているのではとの疑いが浮上した。バイアスが浅すぎるのが原因に違いない。バイアスは17Vのツェーナー×2で作ってあるので34V以上にはならない。ここをRD47F×1に交換し、バイアスは46Vくらいになった。 My colleague pointed out that the EL34 might go on ‘runaway’ due to excess heat. I decided to change bias setting. It is originally generated by two zener diodes which give 34V. They were changed to one RD47F, then bias became approx. 46V.

2006/1/19
そのほかの部品交換が完了。
 B電源の220μ450Vを200μ500V(JJ製)に、
  12AU7の樹脂製ソケットをタイト製に、
 NFBの220pFスチコンをディップマイカ製に
バイアス電圧を変更した結果、EL34のプレート電流は両chともに50mAに調整できるようになった。
久々の音出し。右chは安定している。しかし、最初聞いたときのような響きとはやや印象が違う。やはり、交換する部品はひとつずつにすべきだった。
Some components were replaced as follows.
  Filter capacitors with JJ electronics made
  12AU7 sockets with ceramic type
  NFB capacitor with dip-mica type
After adjustment of the bias, plate current of EL34 was set at 50mA as shown on the schematic diagram. The right channel gets stable operation. However, the sound became somewhat different from original.

2006/1/23
EL34のIpを確認してみたらずれていたのでバイアスを再調整した。調整したらいったん電源offにして冷えてから再度Ipを確認するという基本が大事。
音はなんとなくオリジナルに戻ったように聞こえる。

2006/1/22
マイナス電源のコンデンサも交換した。(100μF160VのBlackGate)。
Chの初段差動の共通カソードの56kΩを2SC1775Aによる定電流回路に変更してみた。ちょうど良い値の抵抗が手持ちになく、12AU7一個あたりのIpが1.2mAから0.8mAに減ってしまった。無音時のVGKは-10Vになり動作点がやや変わった。左Chに比べるとやや音が小さくなったのでゲインが少し落ちた。音が良くなったかどうかはよくわからない。
改造していない左chだが、オーケストラをじっくり聴いてみるとなかなか良いので関心してしまった。響きの中にいろんな楽器が表情豊かに動いているのがわかる。pの繊細な表現も良いがf全奏になっても交じり合わない。またCDを聞くのが楽しみになった。

2006/1/28
定電流回路の抵抗を調整しなおした。
無音時のVGKは-7Vになり動作点がオリジナルに近くなった。ゲインも戻ったようだ。しかし音はなんとなくつまらない。より緻密な音になったようではあるが表情が失われた。球らしさが失われたとも言えようか。せっかく作ったが抵抗に戻そう。

入力にテスト信号を入れてVpをオシロで計ってみたが、抵抗でも定電流回路と遜色のないリニアリティが出ている(下図)。定電流回路は縁の下の力持ちのはずだったのだが、抵抗ですむのならわざわざ半導体を使って複雑な回路を付加することはないだろう。シンプルが良い。





↓定電流回路時のVp変化                             


↓共通カソード抵抗時のVp変化


2010/3/22 差動プッシュプルへの改造

現状はAB級動作であると思われるので、差動プッシュプルのA級動作に近づけるためにB電圧を下げる。トランスの+310Vタップから+280Vタップへ変更。これでB電圧は390V程度になるはずだ。

それでもB電圧が高すぎるので、プレート電流は控えめの60mAに設定する。定電流回路はLM317を用いた。電流検出抵抗Rは手持ちの10Ωとしたため、電流=1.25V/R=125mAとなり、1管あたり62.5mAが流れるはずだ。

固定バイアス回路は撤去してGNDにつなぐ。定電流回路はGNDに対して+のカソード電圧を発生するので、グリッド電圧は相対的にマイナスになる。自己バイアスと同じ状態だ。実測でカソード電位は+26Vとなった。この状態でプレート電圧Vpkは343Vだ。A級動作としてはまだ高すぎるか。

回路図を書き直した。
さらにシンプルな回路になった。ついでにUL接続だったEL34を3極管接続に変更してみた。

バイアス電位をマイナスからGNDに変更したことでプレート電圧Vpkが下がった。バイアス電位をさらにプラス側にできればさらにVpkが下がってA級動作に近づけることができるが、カソード電位が上がることでLM317での損失が増えるのでそれは止めておく。(プラスの電圧を作るのも面倒だ)

音出しの印象は、緻密、おとなしめ、であるが低音もしっかりしている。差動回路にしたことで2本の真空管が一緒になってきちんとスピーカをドライブしているような感覚がする。音量を上げなくても細かい音の動きが聞き取れるようになり、音量を上げてもうるさく鳴りにくくなった。 これは気に入った。

差動プッシュプル化は一応の成功で音も良くなった。それにしてもこのAQ-1004は全段差動になることを待っていたかのような回路だ。前段とドライブの回路を金田式にして、DCアンプ化したらどんな音になるだろう。

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