(参照文献:金田本 「電流伝送方式オーディオDCアンプ」より、p.85 「電流出力プリアンプ&電流入力パワーアンプ」)
バッテリー駆動のプリアンプからイコライザアンプの回路をとりだして製作した。
MCカートリッジにVICアンプを内蔵し、ターンテーブルから電流伝送された信号を増幅する電流入力イコライザアンプ。差動アンプを使わないシングル構成のTr回路。±4.8Vという低電圧電源で動作する。SAOCによるオフセット制御回路により、次段のプリアンプとのカップリングコンデンサーを不要としている。
■回路図
電源は±4.8Vが指定だが、手持ち電源の関係で、±12Vにした。一部の抵抗値を変更している。MCカートリッジに内蔵する2SK97には-12Vがかかるが、最大定格電圧に対して余裕はあり問題はない。
■シミュレーション
VICアンプの2SK97のSPICEモデルがないので2SK170GRで代用する。ここに4mAほど流れるのでISCで3mA流れるようにR3を調整するとSAOCから1mAくらいが注入されることがわかる。
ついでに周波数特性もシミュレーションしてみた。 30Hzあたりより下でゲインが下がっているのはSAOCの影響らしい。
■製作
1) 基板
2) MCカートリッジ + VICアンプ(2SK97)
カートリッジのピンに直接半田付けする勇気はなかった。
■調整
最初にISCとSAOCの配線を外した状態でTr3のベース抵抗を調整して出力オフセットをゼロにする。この抵抗値は初段の2SK117BLのIdssによってかなり違うようだ。だいたいゼロに近ければよい。次にISCとSAOCの配線を戻し、入力に調整用VICを取り付ける。そしてSAOCの出力Tr.の3.6kΩの電圧降下を測り3.6VになるようにISCのVRを調整する。ISCの2SJ103はIdssが2SK97の電流くらい流れるものを使わないとうまく調整できない。調整後のVRは100Ωより低いのでVRは200Ωでもよかった。
↓調整用VIC (2SK97のGS間はショート状態にする)
■完成
電池はNi-MH(eneloop)が指定だが、手持ちのLiPo(3セル)を使った。いずれはeneloopに交換しよう。
真空管プリアンプ(ラインアンプ)につなぐ。カップリングコンデンサ(0.1μF)は撤去した。
パワーアンプの出力トランスでスピーカへのDCはカットされているのでDC漏れは気にならないが、聞いた感じもゴロつきは心配ないレベル。針がレコードの溝をこする振動がダイレクトにスピーカを鳴らしてくる感覚が格段に高まった。これは異次元のレコード再生音だ。
LPのコレクションはあまりないが、数年前に中古本屋で買っておいたLP(一枚 $2~3)を引っ張り出してきた。Vnのソロは弓が弦の上をはねるときの表現とか高音の倍音がたくさん聞こえてくるのでもっと聞きたくなる。意外なのはこれまでレコード再生は難しいと思っていたピアノの音。弦をたたくアタック音がガツンと感じられ、高い弦に響いている余韻がわかる。演奏者の芸術をレコード盤に封じ込めた当時の録音技術者に感謝したくなる。アナログ再生の良さを見直そう。
次に欲しくなってくるのはカートリッジの針の振動のパワーを作っているターンテーブルのモータのDCアンプ制御だ。